
泣かぬ鼠が身を焦がす
第26章 嘘八百
「それはすごいですね」と言葉にも出して笑うと、俺の笑顔を見たお手伝いさんの表情が少し緩んだ気がした
「?」
「あ、すみません……あの、私純様の身の回りのお世話を担当することになりまして……犯罪、とか……本当だったら、怖いなって……」
あぁ、なるほどね
「で、でもっ、お会いしたら、す……すごく、素敵な方だった、ので……びっくりして……」
素敵って
犯罪者フィルターで見たら何でも素敵に見えるんじゃ
「そうですか。それは、余計な心配をかけてごめんなさい」
「いえ! 私が勝手に勘違いしていただけなので!」
なんか茜さんとは違うけど、これはこれで癒し系かも
「担当なんでしたっけ? お世話になります。よろしく」
「はい、よろしくお願いします!」
もっと仲良くなれば、いい味方になってくれそう
「あ、朝ごはん……! まだでしたよね! すぐに持ってきます!」
「あー……急がなくていいから、ゆっくりお願いします」
「はい!」
パタパタと足音を立てて部屋の前から去っていくお手伝いさん
ちょっと……部屋の鍵、かけ忘れてるよ……
廊下は今人通りが多いから出ていけないけどさぁ、なんつーか
意外と早く出れそう
