
泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
長いこと涙を流して漸く落ち着くと、自分の今の状況をちゃんと把握することが出来た
病院だと予測してたけど、違う
ここ……
拓真さんの家、だ
過去に1度だけ来ただけだけど、あまりに嬉しかったからよく覚えてる
この家具の雰囲気とか、見覚えあるもん
今拓真さんは部屋にいない
俺が落ち着いてからお医者さんを呼びに行ってしまった
そういえば服、着替えさせてくれたのか
って
「あ……」
服着替えさせて貰ったってことは、身体の傷とか見られた……ってこと……?
拓真さんがやってくれたもんね……きっと……
そう考えた時頭に浮かんだのは、今の今まで忘れ去っていたはずの夢
『お前はずっと汚いまま』
夢だってわかってるけど……あんまり見られたくなかった、かも
俺が1人小さな絶望感に浸っていると、お医者さんが拓真さんと一緒に部屋に入ってきた
「具合は如何ですか?」
中年のおじさん先生が俺に穏やかに話しかける
「え、と……」
身体が痛いとかって、言いづらいな
そう思っていると、俺の考えを察してくれたのかお医者さんが
「すみません、外で待っていて貰えますか」
と拓真さんに声をかけてくれた
