
泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
お医者さんに抗ってまで部屋にいる必要はないと判断したのか、拓真さんは大人しく部屋を出て行く
「お知り合いの前で体調が悪いとは言いづらいですよね」
「……すみません……ありがとうございます」
良い人だ
それから俺は先生に身体中痛いことや胃が痛むことを話して、幾つかの質問に答えた
「そうですね……まぁ、大きな病気ではなく栄養失調等による体調不良でしょうから、お出しする薬を飲んで暫く安静になさって下さい」
大きい病気じゃないってのは、まぁ大方予想通りだから良かった
「ありがとうございます」
それに怪我……いや、正確には打撲?のことも聞かれなかったし重ねて良かった
血の繋がらない父親に暴力を受けてましたとか、でも俺に戸籍はないから父親って言うのかもわからないとか、ややこしい話をするわけにはいかないもんな
「お薬は外でお待ちの方にお渡ししておきますね」
「はい」
俺がもう1度お礼を言うと、お医者さんは俺にまた笑顔を見せて部屋から出て行った
それから多分拓真さんとお医者さんが話すような時間が空いて、拓真さんがまた部屋に戻ってきた
「……」
でも、戻ってきた拓真さんの顔には何故か表情がない
