
泣かぬ鼠が身を焦がす
第5章 猫の前の
あれ?
伊藤さんじゃん
「どうしたの?何かあった?」
「……」
黙って俺がいるベッドに近づいてくる伊藤さん
えぇ?なになに?
まさかもう追い出されるとか
俺なんかしたっけ?
色々な可能性を考えていると、伊藤さんに両手首を掴まれて頭上で纏められた
「なに!?なにすんの!?」
「静かにして下さい」
部屋に入ってから初めて言葉を発した伊藤さんは首のネクタイをシュル、と解くと俺の手首とベッドヘッドとをうまいこと結びつけた
わぉ、お上手
っておい
動けねーんだけど
「貴方も、朝の1度だけでは足りないんじゃないですか?」
「は?」
何?
セックスのこと?
俺とシたくて仕事中に抜けて来たわけ?
え?なに、溜まってたの?
俺が考えを巡らせている間に伊藤さんは俺の服を捲り上げて、下半身は裸にさせられる
「い……っつ……」
「はぁ、はぁ……」
息が荒い……!!!
変態みたいでキモい
っつーか、乳首!
そんなに強く噛んだら痛えって
外に出ないためにほとんど日に焼けていない白い肌に吸い付かれて、赤い跡が刻まれていく
キスマークなんてひっさしぶりだな
いや、前付けられてたのは噛み跡だった気もするわ
