
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
すんごい拍子抜け
なんつーかもっと言い争う感じかと思ってたから
「行くぞ」
拓真さんに促されて立ち上がり、廊下に出る
すると後ろから声をかけられた
けど、声をかけてきたのは母さんや義父さんが俺に、ってわけではなくて2人が拓真さんにだった
「あの、杉田……さん……!!!」
拓真さんが足を止めて、ゆっくり振り返る
「これで……アレは全部、黙っていて頂けるんですよね……?」
「お願いします……っ」
必死な面持ちの両親の訴えに、拓真さんは真顔で
「……はい」
と答えた
その瞬間のあの人たちのホッとした顔
それを見た瞬間俺の心がザワザワ動いた
なんでか、なんて後で考えれば明白
例えどんなにダメ人間でも、親は親で
俺との縁が切れることを喜んで見えるのが、心のどこかでショックだったから
「……」
見たくないな
俺が2人から目を逸らそうと拓真さんの方へ向き直ると
「!」
拓真さんは2人のことを、軽蔑する眼差しで見下ろしていた
そのことに、今度は安心する
これで良かったんだって再認識出来たから
なんか俺、情緒不安定なのかも
上がり下がり繰り返しすぎだろ
