
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
そして、裁判所に行く日はすぐに来た
用意されたスーツを着て拓真さんと一緒に裁判所に入る
裁判所に入るなんてこれがきっと最初で最後なんだろうな
なんて考えながら厳かな雰囲気漂う建物の中を歩いた
裁判所なのに裁判をするんじゃなくて調停? って言う名前の話し合いを今日はするらしい
部屋に入ると、既に俺の両親が座っていた
その顔はなんでか暗く沈んでいる
これが、拓真さんが言ってた「手」を打った結果なのかな?
だとしたら相当な威力
実の親も同じように暗い顔をしていたけど、俺は何とも思えなかった
冷めてるな、俺
裁判が始まると、俺と義父さんとの親子関係が存在しないことの話が始まった
俺が先にこれまであの人にされてきたことの話をする
それに関してあの人も母さんも俯きながら頷くだけで反論も何もなかった
途中拓真さんが話し続ける俺を気遣わしげに見たけど、何でか今日の俺の頭の中は妙にクリアで
スラスラ言葉も出てくるし
話してて辛いことなんか1つもない
拓真さんの心配は全くの無意味だった
誰も何の反論もしない
ほぼ俺だけが長々喋らされたみたいな調停は他に聞かれて困るようなことも特になくて、すぐに終わってしまった
