
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
それから始まった調停で、純は落ち着いた様子で淡々と話していた
虐待の話も、特に言いにくそうにする仕草もなく話す
そんなに振り切れていたのか
と俺の方が驚いてしまうほど
純の両親は差し向けた通り純の言い分を完全に肯定した
そして調停は何事もなく終わり俺たちが帰ろうとすると廊下に出たところで声をかけられる
慌てて出て来たような様子の純の両親は、純に声をかけるでもなく俺だけを見て自分たちの身の安否を確認した
そのことに虫酸が走るほど苛立つ
何故息子のことを少しも見ないのか
生みの母親まで
しかし約束を守りはした2人に今更何をする気もなく、俺は記事を公開しない約束は守るという意味の言葉を口にした
すると明らかに安心した顔をする
そのことに純が不安そうな顔をした
また心がざわつく
だがそれも一瞬のことだった
純は不安そうな顔のまま俺の方を振り返り、俺の顔を見た瞬間にその顔を緩めた
何故そうなったのかはわからなかったが、俺の顔を見て安心した表情になったことが俺にも安心感を持たせる
純は両親に未練はない
みたいだな
俺の選択はこれで正解だったということだろうか
