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泣かぬ鼠が身を焦がす

第30章 歩く足には


そして続いた言葉に、俺は心底驚いた


「それにこんなに大きなビルで働かせて頂けるなんて、恐縮です」
「!」


働かせて、って……


俺が拓真さんを振り返ると、拓真さんは穏やかな顔をしながら


「いい人材は会社に必要だろう」


と言った


ま、まじか……!!!
よかった!!! よかった!!!

俺が言うのもなんだけど、拓真さんの会社は日本でも有数の大企業だし就職先としては申し分ないよ!

まじで良かったぁぁ……!!!


「よろしく!!」


俺がまたお手伝いさんの方に向き直って言うと、改まった感じでお手伝いさんが俺と拓真さんに向いた


「先日より、秘書課でお世話になっております。奥村 香織(オクムラ カオリ)と申します。会社のために尽力して参りますので、どうぞよろしくお願い致します」


香織さん、って言うんだ


「よろしくね、香織さん」


俺が名前を呼ぶと、香織さんは照れ臭そうに笑った


「つーか、秘書課なんだね?」


俺が言うと、拓真さんが俺に近づいて来て肩に手を置いてきた


「秘書検定や、他にも幾つか資格を持っていたからな。適任だろう」


秘書検定なんてあるんだ
俺がやましい想像しすぎなのかもだけど、秘書検定ってちょっと厭らしいね

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