
泣かぬ鼠が身を焦がす
第31章 秋風
「純〜お昼ご飯だよ!」
懐かしいその響きに、俺は一時自分の体型のことを忘れる
「ありがと!」
パソコンを一旦離れてテーブルに座ると、茜さんは得意げにお盆を置いた
「じゃーん! 今日のお昼はカツカレーだよ!!」
「……っ」
カツ……カレー……
「純が帰ってきた記念に豪華なのにしようと思ったんだけど、会社にそんなに食材ないから、揚げたての揚げ物とか豪華感あるかなって思って」
茜さんは本当に心底嬉しそうな顔をしてそう話す
……その、キラキラした目やめて……
「熱いうちに食べてね! あ、今日はこれから会議だから残念だけどもう行かなきゃ。またね!」
「あ、ありがと。茜さん」
「うん!」
俺に笑顔で手を振った茜さんは台風のように部屋からいなくなった
残ったのは俺の目の前に置かれた山盛りのカレー、とその上に乗った熱々のカツ
いや、前の俺なら喜んで食べたよ?
こんぐらいの量普通だし
……でもさっき、カロリーをね……
「……いや! 茜さんが作ってくれたんだから全部食べなきゃ失礼だ。美味しく頂いて、明日からまた頑張ればいいよね!」
そうだ!
今日はいい!
これはちゃんと食べよう!
