
泣かぬ鼠が身を焦がす
第31章 秋風
俺は切ない思いを抱きながら拓真さんが差し出した腕に頭を乗せた
「ねー拓真さん」
「なんだ?」
電気も消した暗い部屋で俺は拓真さんに話しかけた
「拓真さんてさ、太ったりしないの?」
会った時から全然変わってない気がする
「そうだな……基本的には常に同じ体重だな。最近までは少し落ちていたが、もう戻った」
「そうなんだ」
最近まで少し落ちてたって俺のせいかな、なんて思ってちょっとドキッとする
でも、ずっと同じ体型を維持できるって羨ましいな
「女の敵だね」
そう呟くと、拓真さんの身体が少し揺れる
俺の言い草にちょっとだけ笑ったみたい
「そうだな」
返事の声にも少しだけ笑みが滲んでいる
このゆったり流れる空気感に無駄に緊張してきた俺は
「……もう少し太ってもいいよ」
と拓真さんに誤魔化すように言ってみた
気にしすぎなんだろうな、俺
でも拓真さんは全然太ったりしてないのに俺ばっかり太ってるとわかるとなんか
自分だけって思う
俺の気持ちはそのままなのに、拓真さんからはどんどん見放されそうって考えちゃう
変かな
俺の言葉を聞いた拓真さんは腕枕している反対の手で俺の髪を撫でた
