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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


いや、そう言われるとそうだけどさぁ

社長の相手してるだけでなんのお金も払わずに不自由なく暮らしていけるんだもんな


「……」


反論する言葉が浮かばなくなって黙り込んだ俺の耳に、拓真さんが小さくふ、と笑った時に吐く息の音が聞こえた


くそ
ずるいぞ

金持ちが


その後は特に面白い会話もなく、高速道路に乗って休憩がてらサービスエリアに寄った

そろそろ出るか、と話したところで


「あ、コーヒー……」


と拓真さんが呟いた


「お金渡してくれたら俺買ってくるよ」
「あぁ……頼んでいいか?」
「うん」
「自分の分も買ってこい」
「やった」


併設されてたカフェで拓真さん用のコーヒーと俺用に甘いカフェオレを買って車に戻る


「!」


あ……拓真さん、やっぱり運転とかで疲れてるのかな
車の中で肩回してる

そーいえば昨日も今朝も疲れてたみたいだった

それなのに長時間運転って


「……」


俺、ほんと何もしてないな
さっきは拓真さんを癒す仕事してるって言われたけど

実際は全然……


車に近づくと俺に気がついた拓真さんは何ともなかったようにする


「悪かったな。ありがとう」
「……ううん」

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