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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


飲み物を受け取った拓真さんが俺の顔を覗き込んだ


「純? どうかしたか?」


あ……やばい
こんなところで気遣わせてる場合じゃない


「お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった」
「そうか。着くまでもう少しかかるから、寝ていてもいいぞ」


俺だけ寝るなんてそんなこと、出来るわけないじゃん

ほんとは疲れてる拓真さんが寝なきゃいけないのに


とは言えず、結局俺は


「うん」


とだけ答えて、買ったカフェオレを飲みながら寝ずに拓真さんの動向を伺ってた

走り出した車の中でずっと前を向いて運転を続ける拓真さんにぽつり、と話しかけてみる


「ねー、拓真さん」
「なんだ?」
「運転免許って取るの難しいの?」
「免許? 欲しいのか?」


欲しいっていうか……
うん、欲しい

拓真さんに楽させてあげられるなら


「運転とか、ちょっと楽しそうだなって思って」
「そうか。運転自体は難しくないが、そうだな……責任が伴う分難しいな」
「責任?」
「楽に移動はできるが、少し間違えば簡単に人を殺せてしまう。それだけ気を遣わなければいけない、という責任だ」


気を遣う……
やっぱり、疲れるんじゃん

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