
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
俺の馬鹿
早く動いとけばこんなことにならなかったのに
旅館に入ると仲居さんが荷物を取りに来てくれて、拓真さんは受付へ
俺はその1連の行動も全て後ろでぼーっと見てるしか出来なくてモヤモヤした
助け合ってる
支え合ってる
そんな言葉が俺たちの関係ではすごく遠く思えて、涙が出そうになる
「純? 部屋行くぞ」
けど俺には当然そんなことを本人に伝える勇気もなくて
「うん!」
いつも通り、馬鹿みたいに振る舞うしか出来なかった
こういう時、どうしたらいいのかわかんねー
素直に言えないし、言っても拓真さんのこと疲れさせるだけな気がする
拓真さんと案内してくれてる仲居さんの後を歩きながら、俺は胸の中に自分では取り除けない鉛が沈んで行くのを感じた
重い
痛い
「ちゃんと予約した甲斐あって、なかなかいい部屋だな」
部屋で窓の外を覗きながら拓真さんがそんな感想を漏らす
「ほんとだね!! 海もすごい綺麗だし!!」
俺も拓真さんの横に寄って、眼下に広がる海に感想を言った
「もう少ししてから露天風呂に入ると夕日が沈む海を見ながら入れるそうだ」
「へー贅沢!! めっちゃ見たい!!!」
