
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
「でもやっぱり俺、いつかは運転免許取ってみたいな。お金ないけど」
俺が自分の気持ちを誤魔化しながら笑ってそう言うと、拓真さんは前を向いたままで
「そうか。金はいつでも出してやるから、本当にそう思うなら言えよ」
と言った
「うん」
本当に、そう思ってるもん
それからまた俺たちはぽつぽつ意味のない会話をするだけになった
途中で「眠かったんじゃないのか?」って拓真さんに聞かれたけど「吹っ飛んだ」と答えて、本当は眠かったけど気合いで寝ないように堪えた
そして数時間後、拓真さんが車を止めたのは大きな旅館の前の駐車場
「ここに泊まるの?」
「あぁ。とりあえず今日は移動だけ。観光は明日な」
「なんか、旅館の中だけでも観光できそうな大きさだけどね」
俺の言葉に拓真さんが車から降りながら「そうだな」と笑う
あ……
また肩軽く回した
目ざとくそんなことを見つけてまたなんとなく胸が痛くなる
「純? ほら、行くぞ」
「あ、うん……って拓真さん! 荷物ぐらい自分で持つよ!」
むしろ拓真さんのも持ちたいぐらいの気持ちなんだけど、拓真さんは「いいよ」と言って2人分の荷物を持って行ってしまう
