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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


熱いお茶をゆっくり飲んで、久しぶりの畳と座卓に癒されながら拓真さんとのんびり過ごす

そして、そろそろ日が傾いて来たかなって頃合いを見計らってまずは大浴場に向かった


高そうな旅館ってだけあって、長く続く廊下を歩く人はみんな上品な雰囲気が漂っている


すれ違う女の人達がよく拓真さんを見てるのは拓真さんのことを知ってるからだろうか

それとも、この見た目に惹かれてるからだろうか

偶にあるキャーキャー騒ぐような女の人じゃないから、どっちでこんなに見られてるのかわかんないな


「あの、すみません」


そしてとうとう声をかけられたのは、大浴場の入り口も目の前に迫った頃だった

拓真さんが短く返事をすると


「杉田コーポレーションさんの杉田拓真さんですよね」


と顔を赤らめた女性2人組のうち1人が言う


「そうですが……」


拓真さんが少し困ったようにそう認めると、「やっぱり」と勝手に盛り上がり始める


偶に見かける側の人もいるんだな


「……」


俺は黙って目立たないようにそっと拓真さんから距離を取る

そんな俺はそもそも眼中に入っていないその人達は特にちゃんとした返事もしない拓真さんに話しかけ続けた

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