
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
人なんてものはどこでどう繋がってるかわからない
だから多分拓真さんはその女の人たちを無下には扱えない
そうわかってる
だから俺は万が一にも俺に目が向かないように少しだけ離れた
廊下の隅にあったソファに静かに腰掛ける
まだ拓真さんたちの話は終わらない
俺は拓真さんの方を見るのも諦めて、下を向きながら自分の手を弄った
「……」
拓真さんたちの特に意味のない話に耳を傾けながら座っていると、大浴場から出て来たらしい浴衣姿の男性が俺の隣に座る
結構近くに座って来たから邪魔だったかな、と隣にズレると、その男の人も何故か一緒にズレてくっついてきた
「?」
その行動に不信感を持って隣を見ると、男の人も俺の方を見ていた
「え、と……何ですか……?」
少し笑ったようにも見えるその男の人は、俺を見ながら俺の太腿に手を置いてくる
な、なんだ……よ……っ
なにすんだ……!!!
騒がないように静かに抵抗すると、男は俺の耳元に口を寄せた
「騒いだらあっちの人達に気づかれちゃうよ? 男にえっちなことされてるってさぁ」
「!? なん、だよ……っ、うるせ……、よ……!」
