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泣かぬ鼠が身を焦がす

第36章 一生添うとは


「好きだ」


真剣な顔でそう言って


「好きだよ」


今度は少し微笑みながら

そして次は、ちょっと呆れるように笑いながら


「純のこと、愛してる」


と言う

拓真さんがどうして呆れ顔なのかって、理由は明白


俺が、凄まじい勢いで涙を流してるから


呆れながらも愛しいものを見るように目を細めて、拓真さんが俺を自分の胸へと導く

包み込まれるように抱き締められて、いつもなら安心するはずがもっと涙が出た


「お、おれ……も、好き……っあいじでる……」


拓真さんは俺の髪を指で優しく梳きながら


「あぁ」


と返事を返してくれる

涙を流し続ける俺を黙って抱き締め続ける拓真さん

暫くして俺の涙がおさまるとゆっくりと身体を離した


「……」


無言で俺の目元の涙を拭う拓真さんに


「目ヤニ?」


と聞いてみると、一瞬きょとんとした拓真さんが笑って


「あぁ。目ヤニ、付いてるぞ」


と言ってくれた


思い出すな

俺があの夢で魘されて、寝てる間に泣いてた時

俺に泣いてるって気がつかせないように涙の跡を拭ってくれたんだっけ

その言い訳が目ヤニって

今思えばすごい色気ないね

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