
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
3段ぐらいの階段を上がった先にあった大きめの扉を開けると、中はやっぱり二階建てなんかじゃなくて高い天井になっていた
けど、びっくりしたのはそれじゃない
俺たちが入った入り口からまっすぐ伸びる通路の両側にある沢山のベンチ
そして通路の突き当たりにある壇上
その奥にはたくさんの太陽の光を取り込んで輝くステンドグラス
これだけ揃っていれば、どんだけアホな俺だってここがどこだかわかる
「……教会……?」
俺の小さな呟きが聞こえたのかはわからないけど、拓真さんがまた俺を振り返った
そして
「行くぞ」
と言って俺の手を取る
デートする時に繋ぐ感じじゃなくて、エスコートをする時みたいに少しだけ手を上げて持たれてそのまま奥へと歩いて行く
俺の心臓の大きな鼓動が、自分の耳から聞こえてくるみたいに響いた
死ぬ、かも
でもだめ
今死んだらだめ
あとちょっとだけでいいから、頑張って俺の心臓
奥の壇上の前、まるで神様から祝福されてるようなステンドグラス越しの光の中で拓真さんが立ち止まる
振り返った拓真さんの表情はいつになく真剣だった
「純」
優しく呼ばれたのが、自分の名前じゃないみたい
