
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
「じゃあ、俺が今から純とする養子縁組は?」
「えぇ? えー……っと……戸籍が一緒になる……?」
ってそれじゃ結婚と同じじゃん
でも拓真さんはまた正解、とにっこり微笑んでくれた
「男女なら最終的に行きつくゴールは結婚だろうが、男同士の場合は明白なゴールがない」
「日本では同性婚は出来ないからな」と拓真さんは笑う
「だから、俺たちは養子縁組をゴールにしようと思うんだ」
「……それって……」
話の向かっていく方向をやっと理解した俺に、拓真さんがまたにっこりと笑った
そして俺の前に片膝をついて、ポケットから小さな箱を取り出す
スウェードの生地で出来た明らかに高級なそれを長い指が開けた
「純、これからもずっとお前を愛してる。だから俺と結婚して欲しい」
箱の中には、シルバーに輝く二本の指輪が入っている
あぁもう
拓真さんのばか
また涙腺崩壊したってば
俺はまた溢れ出した涙と鼻水で声もぐずぐずのまま
「……拓真さん、クサすぎ」
と照れ隠しの文句を言ってみる
「一生添うとは男の習いって言うだろ。相手のことを好きになり過ぎると、誰だってこの言葉しか出てこなくなるんだ」
拓真さんの言いっぷりに「なにそれ」と笑った
