
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
まだ昼前なのに拓真さんが帰ってきてからのことを考えてガチガチに緊張してしまう
だって大反対か賛成かのどっちかしかあり得ないから
「……」
それより、こんなことノートの最初に書いちゃわなくて良かった
折角だもん
最初は拓真さんへの不満とかで始まりたくない
心も落ち着いたところで、首元からチェーンを辿って鍵を取り出した
カチン、という小さな音とともにノートを開くと、中身は当然罫線があるだけで何も書いてない
指で紙を撫でると、新品ならではのちょっと粉っぽい感じがした
立ち上がって、いつしか拓真さんに与えられた鉛筆を手に取る
なんか、緊張する
俺の汚い字じゃ勿体ないんじゃないか、とか考えちゃう
そんなこと考えてたら一生なんにも書けないんだけどさ
「ふは……」
気の抜けるような息を吐いて、1度部屋を見回す
初めて来た時は驚いたなーこの部屋
いつの間にか慣れちゃったけど
目に入る場所のどこにも拓真さんとの思い出が詰まってる気がして、拓真さんへの思いでいっぱいになったところで
「よし」
俺はノートに書き始めた
何があっても揺らがない
拓真さんにずっと覚えていて欲しいことを
