
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
そしてその日はそれ以上何も起こらずに帰って、いつもと同じように……
いや、いつもよりはもっと幸せな気持ちで拓真さんに抱き締められながら眠った
その日見た夢はまさかの拓真さんからプロポーズされるシーンのプレイバックで
起きたら枕元が涙でびしょびしょになってた
拓真さんはやたらと心配そうな顔してまた俺の涙を拭ってくれたけど
俺は夢の内容もさる事ながらまた号泣したって事実が恥ずかしすぎて何にも言えず、とにかく怖い夢じゃなかったから! とだけ伝えた
それから着替えて、拓真さんはまたスーツに腕を通して
「おはようございます、純様」
「おはよ〜!」
「おはよー! 伊藤さん、茜さん」
いつも通りの朝がやってくる
みんな休暇明けだったのにびっくりするほどいつも通りで
あぁ、また前みたいな日常に戻っていくんだなってすごく実感した
だけど俺は戻っていくんじゃだめで、拓真さんの役に立てる大人に変わっていかなきゃいけないから
拓真さんに言わなきゃ
ちゃんと行動しなきゃ
って決意を固めた
今日帰ってきたら言う
絶対言う
言いにくいから貰ったノートに書こうかと思ったけど、これはちゃんと言わなきゃだめだ!
