
泣かぬ鼠が身を焦がす
第37章 好いた鼠は泣いても連れる
拓真さんにプロポーズされ、俺の名前が杉田純に変わってからもう5年が経とうとしている
今の俺はというとあの時決心したことをちゃんと拓真さんに伝えて、少しは役に立つ人間になったんじゃないかな
なんて、自己評価高すぎるか
でも思い出すな
俺が「仕事をしたい」って伝えた時の拓真さんの顔
すんごい驚いてたもん
「純、今日はこの書類で終わりか?」
「はい。本日の業務はそちらの書類に目を通して頂いたら全て終了です」
今の俺は杉田コーポレーション秘書室、拓真さんの第1秘書として働いてる
仕事をしたいと言った時に秘書業務を教えて欲しいって頼み込んだんだ
だって、1番近くで拓真さんのことを支えられると思ったから
それからこの5年間伊藤さんの元で色んなビジネスマナーやスケジュール管理の仕方を学んで来た
寝る間もないほど大変な時期もあったけど、こういう細かい仕事1つ1つが今までの拓真さんを支えて来たんだって思ったらそれほど苦痛にも感じなかったっけ
それで、当の伊藤さんはといえば今は第2秘書
俺が仕事をしたいって言った時から、いつかは俺に第1秘書は譲るつもりだったって言ってた
期待されて嬉しい反面、責任感を感じて気が引き締まる思い
