
泣かぬ鼠が身を焦がす
第37章 好いた鼠は泣いても連れる
そんな俺に拓真さんが近づいて来て、机の方へと導かれる
エスコートされるみたいに椅子まで引かれて座ると、後ろから覆いかぶさるように拓真さんが俺を抱き締めた
「もう5年、なんだね……」
「長かったか?」
「ううん、短かった」
「そうだな」
机の上に置いた俺の左手の薬指にある指輪がロウソクの火でゆらゆら光ってる
そこに拓真さんの手が重なって、指先で指輪を撫でられた
その撫でてる拓真さんの手にも俺と同じ指輪がついていて、俺は反対の手で拓真さんの指輪に触れる
人の体温で温まった指輪に、なんでかすごく落ち着いた
「純」
名前を呼ばれて少し顔を後ろに向けると、すぐにキスされて
「5年間ありがとう。これからもよろしく」
って囁かれた
あぁ、やばい
我慢してたのに
「俺の方こそ、よろしく」
言い終わるなり表情を崩した拓真さんが俺の目にキスをした
「泣くなよ」
「泣いてない」
「嘘をつくな。目元しょっぱいぞ」
俺だって好き好んで涙脆くなったわけじゃないっつーの
「俺以外の前で泣くなよ」
「…………泣きたくても泣けない」
「そうか」
俺の答えに満足げに笑った拓真さんがまた俺の頭にキスをしてから向かいに座る
