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泣かぬ鼠が身を焦がす

第7章 馴染めば思う


結局、大した反論も出来ないまま肩を貸して浴室まで杉田さんを連れて行った

そして「風呂ぐらいは入れるだろ」と出て行こうとした俺に今度は


「逆上せて中で死んでいたらどうする」


という脅しの言葉を浴びせ

今現在、2人で浴槽に浸かっているのであった


「……嘘つかれた」
「? 誰のことだ?」
「無自覚は罪だよ杉田さん」


だって全然ピンピンしてるし
考えてみれば起きたばっかりで寝れるわけもないし

騙された

なのに何故俺は杉田さんの背中まで流すことになったのか


あぁぁぁぁと心の中で叫び声をあげながら、何故か俺の背もたれになっている杉田さんを圧し潰す

もぞ、と動かれて力を抜くと手で髪をかき上げる気配がした


「俺のことを言いたいのか? 嘘などついていないだろう」
「倒れる気なんか全くしないけど」
「幸運だな」


なんだそれ
アホか


呆れ半分疲れ半分で「ふへ」と変なため息を漏らすと、浴槽の淵にあった杉田さんの手がお湯に入ってきて


「!?」


俺の太腿に置かれた


「な、なにこの手……!?」
「肌触りがいいな」


俺タオルじゃねーんだけど


杉田さんにその気はないってわかってるのに、背筋がゾクゾクする

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