テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第7章 馴染めば思う


俺の質問に、杉田さんは横になりながら答える


「仕事が詰まって自宅に帰るのが面倒くさくなるとここで寝ていたんだ」


ってことは自宅は別にあるのか
当然だけど


「へぇ。そんなに忙しいの?社長なのに?」
「…………」


続けた質問に、杉田さんは何故か黙ってしまった


あれ?
俺なんか変なこと言ったかな


「杉田さん……?」


俺がもう1度声をかけると「あぁ、すまない」と謝って


「ノラに言われたように、社員に任せることを躊躇っていたんだなと思ってな」


と呟くように言った


「? 他の社員でも出来る仕事を自分でしてたってこと?」
「そうだな……。信頼出来ていなかったのかもしれいない」
「それは可哀想だよ」
「あぁ。今回のことで身に染みたよ」


しんみりと天井を眺める杉田さんを見て、俺は内心ちょっと嬉しい気持ちだった


俺の言葉をこんなに真摯に受け止めてくれる人っていなかったし
こんなに人が反省してるのとか新鮮で

杉田さんには悪いけど面白い


「何か可笑しい事を言ったか?」
「ううん、別に」
「顔が笑っている」
「元からこういう顔なんですー」
「そんなわけあるか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ