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(旧)短編☆中編小説集

第11章 運命の愛

・藤ヶ谷side

この世の中には、同性しか愛せない者がいる。

実は俺も、その部類で。

理由なんて自分でも分からない。

初恋を迎えたとき―

周りの友達は、普通に女の子を好きになっていたのに

俺が好きになったのは担任の男の先生。

ただ、それだけ。

だけど、そんなこと誰にも言えないだろ。

それで―

小学生で、Jr.に入ってからも。

最初のうちはなるべく大人しくしていたんだ。

が、中2の春を迎えたとき私立の学校へ通っていた為

電車通学をしていた俺は。

その車内で見かけたやつに一目惚れしてしまってよ。

その着ている制服から見ても高校生、それも明らかにノンケ。

それからは毎日、見つめていたっけ。

初だったよな、あの頃の俺

でもある日気づいたんだ、そいつが痴漢されている事に。

だが当時まだ中学生だった俺はどうしていいのか分からなくて。

助けたい、だけど…

下手に騒いだら恥ずかしい思いをさせてしまうに決まってる。

目の前で毎日、繰り返されている痴態。

必死で防ごうとしている姿を俺は、堪らない気持ちで見つめていた。

好きなやつを助けられないなんて何て情けない男だろう。

そう歯痒く思い。

―が、そんなある日ことは起きてしまう。

そいつの周囲に出来あがっている人壁を見て焦ったさ

まさか、あの男ここでやるつもり冗談じゃねぇって。

そいつを汚すな、やめろ!

そのとき神は、俺に味方をしてくれた。

今でもそう思っているぜ、北山。

とつぜん急ブレーキを掛けた電車、どよめく車内。

その隙に―





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