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イケメン戦国【上杉謙信】繋がれた手

第1章 繋がれた手

「涼莉、おまえはどの着物が好きなのだ?」


「ありがとうございます。…あっ!この着物はどうでしょうか?あ、これも……!」


手に取った何枚かの着物を、自分に当ててみせると、謙信様は目を細めながら微笑む。


「……ああ、全てがよく似合っているな。」


「謙信様はどの着物がいいと思いますか?」


「全てが似合っていると言ったであろう。おい、店主、これを全てくれ。」


「ちょ、謙信様っ!こんなに高価な着物、こんなにたくさん着切れませんよっ!1枚で十分です!」


「たった1枚で良いのか?似合っているものは全て買ってやりたいが。」


「1枚で十分すぎます!だから……」


「何だ?」


「あの…謙信様に選んでいただきたいなって。」


「そうか………」



謙信様が穏やかな表情で私を見つめ、

「おまえらしいな……」

そう言って微笑む。



「それならば、これが良い。淡い色がよく似合っている。帯はこの刺繍の入ったものはどうだ?」


「はい!とても素敵です!…でも、こんなに豪華な物を買っていただいていいんでしょうか?」


「おまえに似合っていれば構わん。」


謙信様はさっさとお勘定を済ませ、包みを小脇に抱えると、当たり前のように私の手を取り、店を出てスタスタと歩いていく。


「あの、ありがとうございます……」

「礼はいらん。俺が買いたくて買っただけだ。」



穏やかな優しい眼差しで私を見る謙信様に、罪の意識で胸が痛む。


私が安土城に住み、謙信様と敵対する信長様のお世話になっていることは事実で。

そして、織田陣営の人間であることは事実で。

戦とは無縁な安土の町娘………謙信様に嘘をついていることに他ならないーーー。


「あの……謙信様………?」

「何だ?」


ふいに立ち止まった私を見て、謙信様は怪訝そうな表情を見せる。


「わ、私……本当は………」


繋がれた手。
この手が離れて行きそうで怖い。


「私………」


うつむく私に、謙信様が沈黙を落とす。


「………。」



長い沈黙のあと、先に沈黙を破ったのは謙信様だった。

「もう良い………。行くぞ。」


私は、何も言えないまま、何も考えられないまま、謙信様に手を引かれて、ただただ歩いたーーー。


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