イケメン戦国【上杉謙信】繋がれた手
第1章 繋がれた手
謙信様に連れて来られたのは、一軒の甘味処だった。
「歩いて疲れたであろう。好きなものを頼め。」
「ありがとう、ございます………」
私が言おうとしたこと、そのあとの沈黙のこと、謙信様は何も聞かない。
まるで忘れているかのようにも見える。
でも、私は言わなければならない。事実をーーー。
「涼莉………もう良いと言ったであろう。」
注文を終えた謙信様が、うつむく私の顔を覗き込む。
このお方は敢えて聞こうとしないのだろう。
私の気持ちを汲んでーーー。
そんな謙信様の優しさに、ふと涙がこぼれ落ちる。
「このようなところで泣くな……。」
謙信様の手が、私の髪を撫で、そして唇が私の頬の涙を掬う。
ただ無言で髪を撫で、頬に唇を添わせる。
私の涙が止まるまで。
そしてーーー。
「涼莉、愛している。」
柔らかく微笑んだ謙信様は一瞬空を見上げ、
「…例え敵陣の女であってもな……。」
それはまるで、独り言のような微かな呟きだった。
▶ 完 ◀
「歩いて疲れたであろう。好きなものを頼め。」
「ありがとう、ございます………」
私が言おうとしたこと、そのあとの沈黙のこと、謙信様は何も聞かない。
まるで忘れているかのようにも見える。
でも、私は言わなければならない。事実をーーー。
「涼莉………もう良いと言ったであろう。」
注文を終えた謙信様が、うつむく私の顔を覗き込む。
このお方は敢えて聞こうとしないのだろう。
私の気持ちを汲んでーーー。
そんな謙信様の優しさに、ふと涙がこぼれ落ちる。
「このようなところで泣くな……。」
謙信様の手が、私の髪を撫で、そして唇が私の頬の涙を掬う。
ただ無言で髪を撫で、頬に唇を添わせる。
私の涙が止まるまで。
そしてーーー。
「涼莉、愛している。」
柔らかく微笑んだ謙信様は一瞬空を見上げ、
「…例え敵陣の女であってもな……。」
それはまるで、独り言のような微かな呟きだった。
▶ 完 ◀