テキストサイズ

マーメイドな時間

第25章 野田目幹太と寿司屋の親方

 親方はお茶を一口飲むと、当時の事を思い出したのか、目頭を押さえていた。


 そのお茶は、俺のお茶なんだが……。


「私はね、もう生きていてもしょうがないと、気付けば海辺の岸壁の上に立ってました」


 そんなことがあったのか……そうか、親方が海に飛び込んだ時に、人魚に助けられたんだな。


「私が飛び込もうとしたとき……」


「したとき……?」


「東ちづるさんと船越英一郎さんに止められました」


「サスペンスの撮影っ!? いや、岸壁って……まあまあ、大事な場面じゃねぇか……」


「その時、人魚に出会いました」


 突然すぎるだろ!! 間のエピソードないの!? いや、すぐそこだったら、見てるよね撮影スタッフ。


「人魚は、私に言いました」


「なんと言ったんですか?」


「私と契りを交わしましょう……」


 普通の話だと、あり得ない、嘘みたいな話だ。だが、当たり前みたいに人魚を見ているから、すべて信用できる。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ