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マーメイドな時間

第1章 部屋に……

 僕は「中島香奈夫(なかじまかなお)」高校三年生の男子だ。


 香奈夫と言う名は、母親が女の子が欲しかったらしく、残念ながら出来たのが男だったから、こんな名前にしたそうだ。つまり、生まれたての子に対する、見えない嫌がらせを、物心がつかないうちに僕は受けていた。


 ちなみに、母は僕のことを、香奈と呼ぶ。


 まだ家の中なら、それでいい。


 外で呼ばれると困る。


 スーパーで買い物をしていて「香奈」と呼ばれて、僕が出る。


 丸刈りで分厚い眼鏡をかけた、ニキビ面の男の、どこが香奈だ。


 フルで香奈夫と呼んでほしい。


 それも重要だが、もっと重要なことがある。


 僕は受験生だ。


 もちろん、勉強もしなくちゃならない。


 そのため、母親が僕に家庭教師を紹介してくれた。


 それは、僕にとってはありがたい。


 出来れば、男性の方がよかった。


 思春期を迎えてしばらく経つ自分に、女性の教師は勉強の妨げになる。


 いまは、その欲求は捨てるべきだ。


 でも……受験のストレス解消も考えれば、少なからずとも性に対する欲求もあるわけで……。


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