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マーメイドな時間

第4章 家庭教師「山本茂晴美」

 僕は中島香奈夫。受験を控える高校三年生。


 それ以外、なにものでもない、丸刈りの男子だ。


 最近、うちでは家庭教師を呼んでいる。


 名前は「茂晴美」先生。


 ちなみに、フルネームではない。


 山本茂晴美が全部だ。


 山本はつけなくてもいいように思う。


 まあ、それで過ごしているんだから、なにも言うことはない。


 いま、時間は午後6時。


 もう、先生がくる頃だ。


『ビタン……ビタン……ビタン』


 人でない、なにかが迫ってくるような、この音がいやだ。


 どんな者が来るのか、知っているだけに、どう移動しているかが、生々しく頭に過る。


 実際に見ていないが、おそらく、こう移動しているだろうという正解に近い想像はできる。


 這いずる、しかなかろう。


 腰から上は直視出来ないほどの、美人な方なんだ。出来れば海で会いたかった。


 今日は、ぜひ移動手段を聞いてみたい。


 どうやって、ここまで来ているのか?


 ここは海から遠い、都会の真ん中。


 でも、近くに川がある。


 まさかな……。


 鮭や鰻のようにって訳には……。


『コンコン』


 来やがった。



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