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マーメイドな時間

第7章 グループホームに……

「これねぇ、天海さんが入ったあと、よくこれが落ちてるのよ。ま、抜け毛みたいなものだけどね」


「天海さんの……」


 いったいなにかしら?


 浴槽のそこに、なにかが落ちている。


 私は拾ってみた。


 それは、昭美さんが拾い集めてるのと同じやつだった。


 なにかしら?


 表面はキラキラしてキレイだけど、薄くて鋭利な刃物みたい。


 昭美さんが、集めたそれを手に持って言った。


「ギターのピックにはちょっと大きいかな……使えないか」


 え、何に使おうとしてたの? ピックくらいなら、私も知ってるわよ。


 いやでしょ、老婆の体から抜け落ちた物体で奏でるメロディーなんて……。


 さて、そろそろ出たいわね。


「もう、出ていい?」


「あ、はい。ちょっと待っててね、バスタオル用意しますね」


 スッキリした。体をキレイに拭いてもらって、ありがたい。でも、自分で出来ることはやりますわよ。


 服は着れますから。


 頭も乾かしてもらって、お風呂場から出た。


 目の前には天海さんがいる。


「あら、天海さん、スッキリしたねぇ」



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