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マーメイドな時間

第1章 部屋に……

「あ……いい名前ですね」と言ってみた。


「そう? うちのパパがさ、雄の子が欲しかったらしいのよ。でも、生まれたのが雌の子だったから、名前を茂晴美ってつけたみたい」


 その名前、女性として、一生を棒にふってないか?


 そんな、余計な心配をしてしまう。


「もう、問題は出来た?」


 そう言って、先生、茂晴美は机に肘をついて、問題集を覗きにくる。


「いや……あの……」


「まだ、なんにも書けてないじゃないの。これはね、さっきの問題とほとんど同じ。最初に説明したけど、ここはね……」


 横を向くと、生肌を露出させた上半身しか見えない。


 それも、胸の方に目がいって、集中できない。


 あのヒトデの向こう側には、なにが待っているのだろう?


 先生は丁寧に、問題の解き方を教えてくれているのだが、まったく耳に入ってこない。


「……て、やれば、ここの値が出るの。わかるかな?」


 いや、その容姿でまともなこと言われても……。


「あ……はい……」としか言えない。


「じゃあ、ここはいいから、次の問題、考えましょう」


 家庭教師としては、いい先生なんだろう。


 人間ならば……。



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