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マーメイドな時間

第9章 家庭教師またまた「山本茂晴美」

「先生!!」


 僕はバンと、机を叩いて立ち上がった。


「ど、どうしたのよ……」


「あの……」


 どうした、言え!! 胸を見せてくれと、触らせてくれと、吸わせてくれと!


「あの……上着、着ませんか?」


「ぇ?」


 なに言ってんだ、このバカバカバカ!!


 そりゃ、言いにくいだろ。自分の性格よくわかってるもん。人間なら言いにくいけど、相手が人魚だから、言えるかもしれないという、薄々な期待をかけたとしても、言わなきゃなにも始まらないんだ!!


「どうして? 先生は寒くないよ」


 ほら見ろ、真っ正面からとらえちゃったよ。


 投げるときは変化球なしの直球のくせに……。


「いや、じゃなくてですね。あの、集中出来ません」


「どうして?」


「……それは」


 おっ!! 言いやすいパターンじゃないのか? 頑張れ自分、頑張れ香奈夫!!


「その……つい、先生の方を見てしまうんです」


「?」


 よしっ!! 切り口はそんなもんだ。まあ、まだ様子を見よう。相手は鉄壁の防御のくせに、攻撃的な軽いジャブをはなってくるからなぁ。



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