けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
「麗奈さんっ?」
翌日、大学のキャンパスで速効で出会ってしまった。
あたしは噴水の近くのベンチでお昼御飯のつもりで菓子パンを食べていた。
でたっ、聖矢だ。
昨日の今日で本当に会えてしまった。
あたしはさっと立ち上がり歩きながら菓子パンを食べる。
そのまま、スルーして逃げる。
もう関わらない。
こんな胡散臭い男。
冗談じゃない。
ぷいっとあからさまにそっぽを向いてスタコラ逃げる。
「ねぇ、麗奈さん?
何逃げてんの?
無視するとかひどくない?」
図々しく隣に並んで歩く。
急ぎ足で。
「ねぇ、見て、ちょっとあれ……」
「珍しいツーショットっ、聖矢くんと麗奈さま〜」
「絵になる二人〜」
回りの人達の声が聞こえる。
聖矢があたしに近付き耳元で甘く囁かれる。
「キスまでした仲なんだからそんなに照れなくてもいいでしょう?」
「変なこと言うなっ……!」
振り返って膝蹴りをお見舞いしてやろうかと思って片足をあげて。
踵の高い靴を履いてたもんだからバランスを崩して転びそうになる。
聖矢の体がさっとあたしの前に回り込んで。
体を支えてぎゅっと抱き止めてくれた。
あたしの視界を塞ぐ広い胸板。
熱い体温。
力強い腕。
カァっと体温が上昇してしまう。
はずみで食べてたパンが落ちて芝生の上に転がってるのが見えた。
周囲からきゃーっと言う声が上がる。
「素敵〜」
「さすが工藤くんっ」
けっ、バカじゃないの?
しら〜とした思いで聖矢の胸から体を起こす。
「何もない所で転びそうになるなんて、可愛い、麗奈さん」
「違うっ、あんたを蹴ろうとしたんだからっ」
腕の中から逃げ出そうともがくのに、ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。
それはもう、ぎりぎりと締め付けられて苦しいのに。
回りの人達からは熱い抱擁に見えるらしい。
くっそ〜。
蹴飛ばしてやりたいのに、聖矢の長い両膝でがっちり押さえられている。