けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
溜め息をついて鏡の中の自分を見る。
上品で清楚なデザインのワンピース。
あたしの趣味じゃない。
両親からの物だ。
結婚式に着ていくような雰囲気。
長い髪をアップにして。
完璧。
どこから見てもただのつまんないお嬢様。
今日は日曜日。
お互いの両親と婚約者に会う。
完璧な人形を演じる日。
溜め息をひとつついた。
「まぁ、麗奈さん、いつ見ても綺麗で……」
「椿くんも相変わらず逞しい。
とても理系ぽくは見えないな。
今はどんな研究をしているのかい?」
お互いの両親からの誉め合い。
高級ホテル。
窓の外の景色は絶景かな。
高層ビルだから空が近く感じる。
あたしの向かい側には婚約者の椿さん。
和風なイケメンという感じ。
聖矢が洋風の綺麗顔として。
椿さんは和風なきりりとした端整な顔立ち。
ピシリとした雰囲気。
目が合うとふっと甘く笑う。
意味なくドキドキする。
この笑顔が苦手。
何を考えてるのか分からない。
真っ白なお皿に。
見た目が綺麗な少しだけ乗っている前菜を上品に食べながら会話を聞いてる振りをする。
難しい大学の研究の話、薬品の話、親同志の仕事の話。
適当に相槌を打ち上品に微笑む。
早く時間が過ぎるのを待っていた。
食事を終えて情報交換が終了して両親ともどもは解散する。
あたしと椿さんはここからは2人で過ごさないといけない。
「麗奈さんはどこか行きたい所がありますか?」
「適当に街をぶらつきたいかな?」
あたしは椿さんの前では猫を被らない。
嫌われたいと思ってるから普通にしてるのに。
まだ嫌われてないらしい。
ふっとまた甘く笑う。
「じゃあ、行きましょうか?」
「ハイハイ」