けだもの系王子
第2章 聖矢 、子犬系?
「やっ、さきちゃんっ、もういいからっ!……!」
焦った様子の聖ちゃんが、また布団を掛けようとしている。
「あっ、ちょっと、またっ、起きなさいってばっ!」
その布団の上に乗っかる。
「……っ!」
「着替えてもらうからねっ!」
布団をめくり、ブラウスのボタンを止めて、ネクタイを手早く結ぶ。
聖ちゃんがあたしの顔をじっと見つめる。
「はいっ、じゃあ、あとはちゃんと自分でするのよっ、待ってるからねっ」
朝の仕事をやり遂げたあたしは、満足して聖ちゃんから離れて、さっさと部屋を出る。
台所に続く廊下を歩いていたら、バタン、慌ただしくトイレに向かう聖ちゃんの姿が見えた。
「トイレに行きたかったんだ?」
あたしは一人、呟いた。
工藤 聖矢。
あたしの1つ年下の従兄弟。
あたしのお母さんと、聖ちゃんのお父さんが兄妹。
マンションの隣同士に住んでいる。
聖ちゃんのお母さんは、聖ちゃんを生んですぐに亡くなってしまった為、父子家庭。
食事の面倒とかはほとんど、家のお母さんがやっている。
半分同居のような状態。
年も近いし、あたしもキョウダイがいないから、本当のキョウダイみたいに育った。
あたしにとって、可愛い妹のような存在。
実際可愛いいし、男にしとくのがもったいない。
甘えたがりで、寂しがりであたしにべったりだし。
低血圧だし、なんかほっとけないんだ。
「おはよー」
2年2組の教室に入る。
聖ちゃんは1年1組だから、さっき別れた。
「おはよー、さき、聖ちゃんの面倒ご苦労さん?」
親友で幼馴染みのなおちゃんがひらひら手を振る。
「もうっ、疲れたぁ」
自分の席に座り、どっとうつ伏せになる。
「なになに?聖ちゃん、なんかやらかした?」
おもしろそうに身を乗りだす幼馴染み。