けだもの系王子
第2章 聖矢 、子犬系?
「聞いてよなおちゃん、今日の聖ちゃんは特別ひどかったっ、もう、とろいったらないよ」
「ま、今に始まったことじゃないけどね?」
溜め息をついてる。
「なかなか起きないから、部屋に起こしに行ってさぁ」
「うんうん、ま、良くあるよね?」
「ぼぅっとしてるから、脱がして服まで着せたのよ」
「……」
「そっからトイレに行って、長いのこれがっ」
「トイレ?」
「出て来てもぼぅっとしてるし、顔が赤いから体調悪いかと思って、熱もないし、妙におとなしいし」
「うん、うん?」
なおちゃん、また、にやにやしてない?
「遅刻したくないから自転車で来たのよ、しかもあたしの運転でっ」
「聖ちゃんが後ろに乗ったわけだ、しかもぎゅっと抱き付いて?」
「こぎにくいのに頑張って来たのよ、それなのに、着いてもなかなか降りないしっ」
「……」
「先に行ってとか言われて、意味分かんないっ、腹が立ったから、本当に置いて来ちゃった」
「うん、そこは置いて来てあげよう、今頃トイレかな?」
「はあ?なんで?」
「お年頃だからかな?」
「意味分かんないっ」
むっき〜と叫ぶあたしをなおちゃんが大笑いして見ている。
「まぁ、でも登校拒否になるよりいいじゃん?」
聖ちゃんは、中学校の時にいじめにあい、登校拒否気味だった。
「あたしが必死に守って、無理矢理引っ張って来てるから、もう大丈夫だけどね?」
「まぁ、落ち着いたと言うか、逞しくなったと言うか……」
「逞しくなったぁ?」
首をかしげてしまう。
「あら、聖ちゃんもててんのよ?」
「ふうん?」
良く分からない。
あたしにとっては、妹みたいな存在だから。
この時のあたしはぴんとこなかったんだ。
昼休み。
聖ちゃんが待っている、屋上へと向かう。
お弁当を持って、階段を掛け上がる。
はあはあ、息をつく。