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けだもの系王子

第8章 涼、蓮、意地悪系?







同じ大学と言っても院生とはなかなかキャンバスで会える事はほとんどない。





涼先輩は研究とかがほとんどでひたすらパソコンや本とにらめっこしてるみたいだから。





要するに外にあんまり出ない。





ばったり会える確率もほとんどない。





噴水広場前のベンチでぼうっとしていた。





お昼にコンビニで買った菓子パンをもそもそ食べていた。





食欲もなくて食堂で食べる友達とはそっと離れた。





天気が良くて髪を揺らす風が気持ちいい。





乱れる髪を押さえていたら、目の前に長い影が出来て顔を上げてドキリとする。




「由宇ちゃん、体調は大丈夫?」





片手に何冊か難しそうな分厚い本を抱えている。





5月の陽射しが涼先輩の髪を照らしていて。





綺麗だなと思った。





心配そうな瞳に目を反らしたくなる。





「涼先輩……。
大丈夫なの、昨日はその……ごめんね?」





「いや、あれは俺が悪い。
あんな時に女の子を一人で待たすなんて最低だったよな」




「そんな事ないよ」





膝の上に視線を落とす。





涼先輩があたしの隣のベンチに座る。





あたし達の後ろで噴水の水の音がして。





密着してドキドキする。





隣に座るだけなのに。





なんか、距離が近い気がして。





ぎくしゃくしながら菓子パンを食べる。





「髪、一緒に食べてる」





涼先輩の手がふっと伸ばされてあたしの髪に触れる。




「可愛いい、由宇。
抱きしめたい」




……えっ?





ぎゅっと抱きしめられる。





回りに人はいないけど……。





離れた場所に歩いてる人がいるし……。





「俺は最近おかしいんだ。
由宇に触れたくてたまらない。
こうしてるだけでも満足出来たのに……
もっと由宇に近付きたくて堪らない。
がっついてるみたいで嫌か?」




涼先輩の腕の中ですっぽり抱きしめられて。




耳元で甘くて掠れた声を聞きながら。




嬉しくてぎゅっと目を閉じた。




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