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けだもの系王子

第8章 涼、蓮、意地悪系?





舌打ちしながらアパートを出た。



「クソッ!」



イライラしながら歩く。



どいつもこいつもカスに見えてしょうがない。



眩しい日差しにさえ腹を立てる。



涼、俺の双子の兄貴。



仲はいい方だ。



昔から好みも趣味も一緒。



髪型を変えても何故か同じようになる。



気が合うけど女の趣味も一緒。



遊びの女をシェアして、本気になる女も共通していた。



あいつの女を口説いてねとって、そんな事を続けたせいか、独占欲が強くなった涼。



それに対して俺は、執着しない。



いつもあいつが俺の一歩先を歩いて、おいしいとこを持っていく。



執着心が強い涼は努力家でねちっこくて、執着心がない俺は諦めるクセがついていた。



だけど。



由宇は……。




俺が先に見つけたのに……。




俺の方が先に会っているのに。






健矢とは同じ大学で彼女である由宇のノロケ話をさんざん聞いていた。



馬鹿な奴で聞きたくもないエッチ話まで聞かされて、見たくもないエロ画像を見せられてウンザリしていた。



だけど次第にエスカレートしていく健矢のエロ話に、気持ち悪くなって何度か注意をするうちに、まさかの『飽きた』宣言。


こいつ本気で馬鹿だったんだなと呆れながらも、彼女に同情した。



映画館に行ったのは、ほんの好奇心と、ちょっとした同情。



噂の由宇ちゃんに会ってみたいと思ってしまった。



別にそれだけで、それなのに由宇にチケットを貰って、何故か隣の席に座る事になった。



正直に言えば馬鹿な下ごごろもあった。



だけど俺は……。



声を殺して、一人で泣いてる由宇を見て……綺麗だと思ったんだ。



映画のスクリーンなんか見ずに、泣いてる由宇の顔をずっと見つめ続けていた。



声を掛ける事もできずに。



ただずっと見とれていただけだったんだ。



涼の縛りぐせにもいつもきっかけがある。



あいつ、何か気付きやがった。



だから由宇を束縛して俺を近付けないようにするつもりだ。



もう、俺は由宇に近付けないのか……?




また、いつものように諦めるのか……?




本当にそれでいいのか?

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