けだもの系王子
第8章 涼、蓮、意地悪系?
涼side
車の中で蓮の姿を見たような気がした。
結婚式にはまだ早すぎる時間。
嫌な予感がして今朝別れた由宇の表情を思い浮かべる。
元気がない表情。
新婦の控え室に行こうとして、ホテルの従業員にやたらと声をかけられて、息を切らしながらやっと控え室に行く。
……誰もいない。
ウェディングドレスがぼつりとあって、テーブルの上には婚約指輪が置いてあった。
『ごめんなさい、涼とは結婚できません』
『今までさんざんお前に譲って来たけど、由宇だけは譲れない、悪いな』
……らしい、言葉。
二人からの手紙も見て溜め息をつく。
やっぱりダメだったか、そんな気がしたんだ。
だからこそ、由宇を束縛して、蓮に見せ付けて近付けないようにしたのに。
急ぎ過ぎたかな。
失敗したな……。
窓の外の景色を見て……そこに明らかな手形が所々にあるのにすぐに気付いて。
ばんっ!
拳を振り上げる。
由宇の手形に叩きつけた。