けだもの系王子
第9章 椿、真面目ぼっちゃん系?
椿side
「婚約破棄とか本当にあるんだな?今時、親が決めたフィアンセとかマジ信じらんねぇ」
同じ大学院の友達と一緒に近場のイタリアンの店に入った。
なんとなく親友の和真に慰められているのが腑に落ちない。
「両親の会社の為の婚約みたいなものだったし、彼女も綺麗だったからまぁ、いいかと思っていたんだけどね?」
「その彼女にお前よりもいい物件が現れたというわけか?」
「そういうことだろうな」
「どんな金持ちのぼんぼんかよ?」
「工藤グループの御曹子だそうだ」
「おお〜、良くコマーシャルとかで見るけど、何だっけホテルとか?」
「飲食店とかも多いいな、この店もその1つだろ?」
「まじかよっ」
アイスコーヒーを飲みながら、何となく忙しく働いているウェイトレスの姿を見つめる。
どうでもいいけど、制服がメイドのコスプレみたいだな。
ふりふりでふわふわで、ミニスカート。
あのウェイトレスなんか背が低いのに、さっきからよく動いているせいかパンツが見えそうで……。
テーブルの下に落ちているライターを拾ったらしい。
あ、見えてしまった。
ピンクのリボンの絵柄のパンツ。
あんなの小学生しか履かないんじゃないか?
「あっ、お客様、おわすれモノですっ」
元気に走って追いかけていくウェイトレスの女の子が俺の傍をスッと通って、ぼそりと呟く。
「ちっ、まじウザいな、忘れるなっつぅの」
俺はハッとして顔を上げてその子の顔を見つめる。
勝ち気で生意気そうな黒い猫目が印象的な美少女。
前髪ぱっつんで長い黒髪、キリッとした眉毛。
小さくて細くて、肌の色が白い。
あっ、ヤバイ。
さっきのパンツといい、これはマジで、惚れた……かもしれない……。
出会いは俺にとっては衝撃的だった。