けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
ううっ、目眩がする……。
貧血?熱中症?
一人暮らしの大学生。
イタリアンの店でウェイトレスをして、大学で勉強、レポートに追われて。
食事はバイト先の賄い1食のみ。
夏休みなのにバイトに明け暮れる毎日。
体力はあるほうだけど、この暑さにやられたのか、さっきからくらくらする。
どこか、日陰で休むべきかな?
思った矢先に声をかけられた。
「唯夏ちゃん?久し振り?」
ハッと息を飲むほどの美形。
一瞬誰なのか分からなかったけど、すぐに気付く。
「涼先輩っ?久し振りっ」
懐かしくて、涼先輩の傍に駆けて行く。
綺麗な顔立ちの美形、見慣れないスーツ姿。
イタリアンのウェイターをしていた、涼先輩。
大学院を卒業して、大手の製薬会社に就職が決まってから、バイトを辞めたけど。
密かに好きだったんだ。
同じバイト仲間の彼女がいて、結婚するとか、しないとか揉めたような気がする……。
あの時の彼女はどうしたんだろ?
聞きたいけど、聞けない。
「唯夏ちゃん、相変わらず、バイト頑張ってるのかな?」
「勿論ですっ、ちょうどバイトの帰りですっ」
優しい笑顔を浮かべて目を細めてあたしを見つめる涼先輩。
ああ、この目……。
好きだな。
真っ直ぐな、優しい瞳。
相変わらずの美形、吸い込まれそうな、艶やかな瞳に色気を纏って。
無駄にときめく心臓。
「ちょっと痩せたみたいだね?それ以上細くなってどうするの?何だか顔色が悪いみたいだけど、ちゃんと食べている?」
心配そうな顔をして、あたしの顔をのぞき込む。
優しくて胸がキュンとなった。
「大丈夫ですっ、ちゃんと食べてますよ〜、今日も店長の作ったランチの賄いをがっつり食べましたからっ」
確かに体調は悪いけど、ガッツポーズをして見せる。
「そう?大丈夫ならいいけど、君は頑張り屋だから、無理はしないようにね?」
「はい、涼先輩は仕事の帰りですか?」
「ああ、そうなんだ、今日は定時で珍しく帰る事が出来てね」
「じゃあ、お疲れですね?」
「君だって、お疲れだろ?」
そこで、なんとなく会話が途切れる。