けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
俺から見たら高級マンション。
部屋の番号を押す。
何度も押し続ける。
インターホンの向こう側から声が聞こえた。
『……はい』
「涼……分かるか?俺だ。
唯夏ちゃんが……お邪魔していないか?
昨日、お前が唯夏ちゃんを抱えてる姿を聖子が見たって言うんだ」
『……どうぞ、樹さん』
ふっと笑う気配。
自動ドアが開いて、マンションの中に踏み込んだ。
エレベーターに乗り込み、涼の部屋のドアを開く。
あっさりと開く。
「涼?入ってもいいのか?」
「……どうぞ?」
靴を脱いで、広い部屋の中に入る。
広くてガランとした部屋。
ドアが半開きの部屋に入って、息を飲んだ。
「いらっしゃい、樹さん」
涼は……裸だった。
全裸で静かに佇む。
部屋の真ん中にキングサイズのベッドがあり、そのベッドの上に唯夏ちゃんがいた。
彼女も……全裸だった。
部屋に散乱している女性の服、あの服は昨日、唯夏ちゃんが着ていた服だ。
ベッドの下には沢山のティッシュ、ゴミ箱の中には、使用済みのコンドーム、それも1つや2つじゃない多さだ。
乱れたシーツ。
裸で意識を失ってる様子の唯夏ちゃん。
誰が見てもこの状況……俺の頭に血が登り、涼の襟首を掴んで体当りの勢いで激しく叫んだ。
「……涼っ!お前……彼女に何をしたっ!」
「街の真ん中で気を失って倒れていたから、俺が彼女を家に連れて来て、休んであげさせただけですよ?」
涼しい顔をして言ってるけど。
こいつ……真っ裸の癖しやがって……!
俺は意識を失ってる唯夏ちゃんに、服を着せてやる。
「唯夏っ!唯夏っ!帰るぞっ!」
頬を軽く叩いて、覚醒を促せた。
ぐったりしている様子の、彼女のしなやかな体を見て、息を飲んだ。
白くて細い綺麗な肌。
その胸元に散らばる、赤い花びらのような痕。
キスマークだ。
涼の只ならぬ、執着心のようなものを感じてゾクリとする。
「彼女は俺が連れて帰るっ、いいなっ!?」
裸のまま、ただ黙って涼は佇んでいるだけだった。
その完璧な綺麗な顔立ちからは、何の感情も読み取れない。