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けだもの系王子

第10章 涼、束縛系?





頭の中で言い訳しながら、あたしの足がだんだんと早歩きになっている。



会いたい。



会いたくない。



会ってどうするんだろう。



なんて言えばいい。



恐いのに。



足が勝手に涼のマンションに向かっている。



やめとけば良かったのに。



惹かれている気持ちは押さえられない。



やっぱりあたしは涼が好きなんだから。



この気持ちは止められない。



また傷付くのかもしれない。



酷い事されるかもしれない。



それでも。



会いたい。



涼があたしに会いたくなくても。



ただ、会いたい。






高層ビルが建ち並ぶ都心のまっただ中。




そびえ立つ高級マンション。




下から見上げて、息を飲んだ。




ここが、涼のマンション。




あの時の記憶が甦る。




急に恐くなって、ただ、立ち尽くす。




ただ、マンションを見上げている事しか出来ない。



恐くてそれ以上足が動かない。




固まっているあたしの背後で聞き覚えのある声が聞こえた。





「……唯夏ちゃん!?」




掠れたような低い声。




ビクリとして振り返る。




ピシリとしたスーツを完璧に着こなして、あたしの傍へと駆けて来る、涼の姿が目にはいった。



久し振りに見る涼。



相変わらずの綺麗な顔立ち。



真っ直ぐにあたしを見つめる瞳。




「……!」




とっさに逃げてしまう。




だって、心の準備が出来てない。



走り出すあたしに涼が呼び止める。




「唯夏ちゃん、待ってくれ……!お願いだから……俺から逃げないで……!」




長身の涼にあっさり追い付かれて、腕を引かれて引き寄せられる。




涼の広い胸にとんとぶつかり、ぎゅっと抱きしめられた。




「ああ、唯夏、やっと、会えた。やっと……捕まえたよ……もう、離さない」



愛しそうに体をぴったり寄せて、きつく、抱きしめられる。



あたしを見つめる熱い瞳。



あたしを欲しがる、獣のような、男の人の顔。




吸い込まれるように、熱く見つめ合い、唇が重なる。



「唯夏、愛している」



彼の愛にまた囚われる。



甘く魅了されて、また、身を任せてしまった。



もう、逃げられない。

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