けだもの系王子
第3章 隼人、無口系?
「おはようございます。体調大丈夫ですか?」
もともと隼人くんはこういう子ではあった。
無口で無愛想。
ずっと敬語だし。
その事が寂しく感じた。
「大丈夫、あの、服とかいろいろありがとう、あたし自分で部屋に行ったのかな?その……あんまり覚えてなくて……」
隼人くんの瞳がきらりと輝き、あたしの顔をじっと見つめる。
「覚えてないんですか?」
真っ直ぐな切れ長の瞳が鋭くあたしを見つめる。
「えっと、あの……途中から……」
なんとなく、責められてるような、気分になる。
しどろもどろになって俯く。
「本当に?」
ソファーに横になっていた隼人くんが、ゆっくり体を起こす。
あたしはソファーの傍で立ち尽くす。
「あのっ、ごめんね隼人くん、昨日の事は忘れて欲しいの……、あたしも酔った勢いっていうか、つい、うっかりというか……」
隼人くんの瞳が驚いたように、大きく見開かれる。
「俺、はじめてだったんですけどね?」
「えぇっ、そうなのっ?」
今度はあたしがびっくりする。
そう言えば、慣れてないって言ってた気がする。
手探りでぎこちない感じもしたし。
それをあたしが……。
さぁっと青ざめてしまう。
「そのっ、ごめんね?」
両手を合わせて謝る。
「責任取って下さい」
じとっと真っ直ぐ見つめられる。
「はじめてで忘れられる訳ないじゃないですか、まどかさんは責任取って、俺と付き合って下さい」
「えぇっ?付き合うって?」
「俺、はじめては好きな人とって決めてたんですよね?だからまどかさんが彼女になってくれたら問題ないです」
「えぇっ、いや、そんなの、困る……」
だって、あたしは……。
まだ美容師見習いだし、残業して勉強もするし、バイトもして休みなんて、ないようなものだし。
「どうして困るんですか?本当に覚えてないんですか?このソファーなんですよ?」