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「なぁ、なぁ、真香(まなか)やらせろよ？」





はっきり言って、今はバイト中、仕事中。




大きないちごのショートケーキをナイフで手早く切っているのに。




同じクラスのバイトの友達、慶紀(けいき)が暇なのか、なぁなぁうるさい。




「けいちゃんは仕事して下さい」




ナイフで切る手を止めずに注意する。





ここはあたしの家でもある、ケーキ屋で喫茶店もしている。




お父さんはフランスで修行をしていたパティシエで近所でも評判のケーキ屋さんだ。





お母さんは有名なホテルでコックをしていた料理人。




だから、喫茶店というつくりで女の子が喜びそうな外観のお店なんだけど、食べ物も美味しいと有名だ。





だからいつも忙しい。





それなのに、なぁ、なぁ、うるさい、この男。





同じ高校3年生。





同じクラス、幼馴染み、腐れ縁。





見た目可愛い系、綺麗な顔立ち、身長はそんなに高くない。




人なつこくて、女の子にもモテる。





だけど、シスコン。





目茶苦茶可愛いお姉さんがいるから、特定の彼女を作らない。





ねぇちゃんのほうが可愛いと言うセリフを何回聞いたことか。





「いいだろ？お前モテるんだから、俺にもやらせろよ？」





なぁ、なぁ、うるさいっ。





最近やたらとやらせろよと言い出して、どういうつもりよ？





「やらせろって何をよ？」





一応聞いてみる。





「エッチに決まってるだろ？」





「バカなのあんたは？」





「最近ねぇちゃんも隼人と付き合いだしたし、俺も彼女が欲しいし、お前ならいいと思ってんだけど？」




軽いのよっ、もっと素敵に言って欲しいっ。





「あたしは好きな人とじゃないと、やらないからねっ」




「ナイフ振り回すなよっ、俺の事好きじゃないってのか？」




「当たり前でしょ？バカなの？」





イライラしながら、もの凄い勢いでケーキをカットしていく。





だいたいあたし、正直モテるし、外見に気を使い努力してスタイルも維持しているけど。





実は、処女なんだ……。




見た目派手なのか、そういう風に見えないみたいで、隠しているけど。