けだもの系王子
第4章 慶紀、友達系?
別におかしくないと思う。
処女で何が悪い?
「痛いっ……!」
考え事をしていたからか、ナイフで添えた左手を軽く引いてしまって、切ってしまった。
何回もケーキをカットしていたから自信あるのに、ショックだ。
「真香っ!大丈夫か?」
暇そうにしていたけいちゃんがあたしの左手をつかんで、自然に切れた指を口にくわえた。
「なっ!」
けいちゃんの唇の生暖かい体温と、舌の感触と痛みにびくんと体が震える。
「んんっ……!ちょっと!」
思わず甘い声が出て、咄嗟に手を払いのけた。
突き放して一瞬驚いたように目を見開く。
だけど、すぐにニヤリと笑い、綺麗な黒い瞳が妖しく光った。
「今、感じたんだろ?
敏感なんだな真香?」
グイっ。
そのままスタッフルームに引っ張って行かれる。
「店長〜真香が切ったから、手当てしてくるから〜」
「大丈夫か?頼むよ?」
大きなホールのケーキを運びながら、お父さんがチラリとこっちを見る。
スタッフルームのドアを開ける。
スタッフの休憩室、ケーキの箱が積み重ねられたりしている中で救急箱を出しているけいちゃん。
黒いサロンを邪魔そうにして椅子に座る。
テーブルの上に救急箱を置く。
消毒、ガーゼ、テープ、ハサミを取り出してるけど、
「こんなの舐めときゃ、治る、絆創膏でいいから」
椅子に座らされる。
「また舐められたいの?感じてただろ?」
なぁ?
あたしに近付いて、制服の赤いネクタイがふわりとあたしの頬にかかる。
急に甘いムードになって顔が赤くなるのが分かる。
意味なくドキドキする。
けいちゃんのくせにっ。
「これくらいで赤くなるとか意外で可愛い。
やっぱ真香が欲しいな?」
はぁ?
あたしの制服の赤いネクタイが引っ張られる。
えっ?
思う暇もなく。