けだもの系王子
第4章 慶紀、友達系?
「何でだよっ!」
逆ギレかっ?
あたしは荒い息をつきながら、女子更衣室に逃げ込んだ。
最後に一瞬傷ついたような表情をしていたような気がしたけど、気のせいだよね?
だってけいちゃんだよ?
何でいまさら……。
女子更衣室の中で乱れた制服を調える。
胸を揉まれた。
暖かい手の感触を思い出してしまう。
顔が熱い……。
暫くして落ちついてから、女子更衣室を出た。
「あれっ?
まなちゃんお疲れ様?
どうしたの顔が赤いけど?」
パティシエの幸人さんが、休憩中なのかテーブルに座ってコーヒーを飲んでいた。
そこにけいちゃんの姿はない。
姿はないのに、救急箱はテーブルの上に置いたままだ。
「置きっぱなしで邪魔だったでしょ?すいません」
慌てて救急箱を片付けようとする。
「いや、いいけど使ってないんじゃない?その手はナイフで切ったの?」
幸人さんの切れ長の瞳がチラリとあたしの左手を見つめる。
ギクリとして何故だか指を隠してしまう。
「大したことないです。絆創膏くらいあればいいのでっ」
開きっぱなしの救急箱から絆創膏を出してると、幸人さんに左手を掴まれる。
「これは絆創膏じゃダメだよ、ちゃんとしなくちゃ、将来有望なパティシエなんだから」
テキパキと消毒され、ガーゼを巻かれてテープをとめられる。
「小さいけど、傷は深いほうだよ。暫く洗い物もケーキのカットも禁止だよ。
今日はホールの方を頼むよ、後は俺に任せて、店長にも言っておくから」
「はぁい……」