けだもの系王子
第5章 結城、優男系?
あたしは結城の話を聞いて、高校の同級生に何度か胸を揉ませてと、頼まれた事を思い出してしまった。
あたしのコンプレックス。
そんなに背が高い訳じゃないけど、胸が大きい。
男の子は皆あたしの胸を見るのに。
結城にはそれがない。
普通の態度。
だから、警戒心なくここまで付き合えた。
「そりゃあ僕も男だから、女の子の誘惑に乗った事もあるけどね、やっぱりそういう事は好きになった女の子としたい訳なんだよ」
ビールを飲みながら良く話をする。
この居酒屋はあたしのバイト先だ。
いつも一緒に働く男の従業員が時々会話に口を挟む。
「お兄さんそういう話は千尋には早いかもな。
なんつっても、その胸で処女だからな?」
「ちょっと、余計な事言わないでよっ!」
結城は驚いたように一瞬目を見開いて、何度か頷いた。
「それはいい人が表れるまで、待ってたんだよね?
いいと思うよ。
そういう事が大事だと僕は思うからね?」
さすがにイケメンはさらりとしている。
恋愛話で盛り上がり、趣味の話、大学の話。
結城は将来店を継ぐ為に経営学部だそうだ。
新しく自分の店を出したりもしたいらしい。
実はあたしも経営学部。
将来は本屋を経営したいと思っている。
お互いの夢の話を熱く語り合い、結城と一緒にいたら話が尽きない。
すっかり遅くなってしまって、明日は映画を見に行く約束をして、家まで送ってもらって別れた。